私は都内産業機械メーカーで10年以上B to Bの営業職として従事しています。入社後から従来の営業活動に疑問を持ち、効率性と生産性を追求してきました。そして、3年目にトップセールスを達成し、社長賞も受賞しました。2025年現在、国内と海外の営業を兼務しており、ほぼ毎日、さまざまな業界の製造現場に足を運び、顧客やその他関係者とコミュニケーションを取っています。営業活動の中では、顧客企業の営業員、販売店(顧客に自社製品を販売する商社)、他メーカーの営業員など、多くの営業員と関わりを持ちます。それらの経験から、売れる営業員にはいくつかの共通する特性があることがわかりました。今回は、それら特性について、製造業界にとどまらず横断的に共通する点に絞って説明します。

B to B営業の基礎
一概に営業とはいってもB to B営業とB to C営業では特性が大きく異なります。まずは、B to B営業の取引における主な特徴をいくつか整理します。
- 商談回数:多い
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高額な製品の取引が多いため、複数回商談を重ねて購買に至るケースが多いです。
- 購買プロセス:複雑
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相見積もり、稟議など、大きな会社ほど購買プロセスが複雑化しています。
- 関係性:長期的
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ベンダー切り替えにはコストがかかるため、一度取引が始まれば長期的な関係が期待できます。
- 意思決定:信頼・実績
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会社の実績と営業員への信頼が大きな決定要因となります。
- 専門性:高い
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その商材に関する高い専門知識が必要とされます。
この人に相談したいと思える特徴とは

「売れる」以前に、「また相談したい」と思われなければ売れる営業員にはなれません。まずは、売れる営業員になるために最低限意識すべき事項を説明します。
- 第一印象
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メラビアンの法則という概念をご存知でしょうか。人は言語情報よりも非言語の要素に9割以上の重みがあるといわれています。表情、視線、姿勢など、第一印象を意識的に向上させる努力が必要です。
- 傾聴力
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傾聴力とは、文字通り聴く力です。態度、関係構築力、質問力の3つを向上させることが必要です。
- 専門知識
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上述のような「人としての魅力」に加え、顧客の生産性や効率性の向上という目的を達成するためには、その分野について幅広く応えられる高度な専門知識が必要です。
売れる営業員が意識しているポイント3選

- 自社の強みを理解し、その強みとマッチングする顧客にフォーカスした営業をしている【戦略】
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戦略は会社全体のテーマになりますが、マーケティング・営業戦略が曖昧なまま闇雲に営業をしているのをよく目にします。特に小さな企業ほどその傾向が顕著です。外部環境、内部環境を十分に理解し、事業ドメイン(誰に、何を、どのように)を整理し、自社の強みを最大限に活かせる市場に適切な方法でアプローチすることが重要です。
- 効率性を重視して価値を提供している【活動】
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企業によっては決済権を持つ担当者は限られます。売れない営業員はそこをあまり意識せず、決済権がない担当者と関係性を深め、一生懸命自社製品をPRしている傾向にあります。決済権がないなら、決済権を持つ上司に商談に同席してもらうよう努めましょう。同席が無理なら、検討材料として使える置土産(事例集など)は最低限社内に回覧してもらうように促すべきです。また、売れる営業員は商談前の顧客の見極めが上手く、リードをスコアリングし、評価が高いリード順に力を注いでいきます。人的資源が限られる中小企業にとって、得たリードへの効率的かつ見極める能力はとても重要です。
- 顧客情報を十分に管理して適切なアフターフォローを実施している【管理】
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売れる営業員は売って終わりにはしません。適正なタイミングでのアフターフォローも怠らず、購買後の問合せに対する回答も早いです。顧客が気持ちよく、不満なく自社製品を使ってくれているかに目を光らせ、何かあれば即座に対応することで長期的な関係性を深めています。顧客には忙しいという言い訳は通用しません。どんなに忙しくても即日対応は徹底しましょう。
さいごに

本記事では、長年のB to B営業の実務経験から、売れる営業員の特徴を説明しました。
顧客にとって営業員は会社の顔であり、“会社そのもの”です。その営業員の対応次第では会社全体の評価を下げる要因にもなります。その責任感を持って接することが重要です。
また、人気の営業員は自社製品に自信を持ち、商談そのものをとても楽しんでいる人でもあると感じます。その根本的な姿勢こそ最も重要な要素なのかもしれません。