製造業の営業担当者が直面する「見えない課題」
「Webサイトからの問い合わせは増えているのに、なぜか成約につながらない」「営業活動の成果が数字で見えず、どこを改善すればいいのか分からない」──こんな悩みを抱えている製造業の営業担当者や経営者の方は少なくありません。
私は中小企業診断士として、これまで20社以上の製造業企業のマーケティング・営業支援を行ってきました。その中で特に多く聞かれるのが、「Webマーケティングと営業活動がバラバラになっている」という課題です。
Webサイトでどんな製品ページが見られているのか、どの経路から問い合わせがあったのか、そしてその問い合わせが最終的に受注につながったのか──これらの情報が一元管理できていないため、「どのマーケティング施策が売上に貢献しているのか」が見えないのです。
実際に私が支援したある産業機械メーカーでは、年間100件以上のWeb問い合わせがあったにもかかわらず、そのうち何件が商談化し、何件が受注に至ったのかを把握できていませんでした。これでは、Webサイトへの投資が正しいのかどうかも判断できません。
この課題を解決する鍵が、GA4(Google Analytics 4)とSalesforceの連携です。この2つのツールを連携させることで、「Webサイトでの顧客行動」から「営業活動の成果」までを一気通貫で可視化できるようになります。
本記事では、製造業に特化したGA4とSalesforceの連携方法を初心者の方にも分かりやすく解説します。「DXって難しそう」「自社にはハードルが高い」と感じている方も、ぜひ最後までお読みください。一歩ずつ進めば、必ず成果につながります。

なぜ今、製造業に「GA4×Salesforce連携」が必要なのか
製造業を取り巻くマーケティング環境の変化
製造業の営業スタイルは、この10年で大きく変化しました。かつては展示会や飛び込み営業、既存顧客からの紹介が中心でしたが、今ではWebサイトを通じた新規顧客開拓が欠かせません。
実際、私が支援している製造業企業の多くで、新規問い合わせの50%以上がWebサイト経由という状況になっています。特にコロナ禍以降、この傾向は加速しています。
しかし、Web経由の問い合わせが増えても、それが本当に売上につながっているのかを測定できている企業は多くありません。多くの場合、以下のような状況に陥っています。
よくある問題点
- Webサイトのアクセス解析はマーケティング担当者が見ているが、営業部門とは共有されていない
- 営業部門は顧客管理システム(CRM)で案件管理をしているが、その顧客がWebサイトでどんな行動をしたのか分からない
- マーケティング施策の効果を「問い合わせ数」でしか測れず、最終的な受注金額や利益への貢献度が不明
- Web広告に投資しているが、その広告経由の顧客がどれだけ売上に貢献したのか追えない
GA4とSalesforce連携で実現できること
GA4とSalesforceを連携させることで、これらの課題を一気に解決できます。具体的には以下のようなことが実現できます。
1. Webサイト訪問から受注までの顧客行動を一気通貫で把握 ある顧客がどのページを何回見て、どんな資料をダウンロードし、問い合わせに至ったのか。さらに、その後の商談進捗や受注結果までを一連の流れで確認できます。
2. マーケティング施策のROI(投資対効果)を正確に測定 「Google広告経由の顧客のうち、実際に何件受注して、合計いくらの売上になったのか」を明確に把握できます。これにより、本当に効果のある施策に予算を集中できます。
3. 営業担当者が商談前に顧客の関心事を把握 営業担当者がSalesforce上で顧客情報を見ると、その顧客がWebサイトでどんな製品ページを見ていたのか、どんな技術資料をダウンロードしたのかが分かります。これにより、より的確な提案が可能になります。
4. 成約しやすい顧客の特徴を分析 受注に至った顧客の行動パターンを分析することで、「こういう行動をする顧客は成約率が高い」という傾向が見えてきます。これを営業活動に活かせます。
私が実際に支援したある金属加工メーカーでは、この連携を導入したことで、Web経由の問い合わせの受注率が従来の1.5倍に向上しました。営業担当者が顧客の関心事を事前に把握して商談に臨めるようになったことが大きな要因です。
GA4とSalesforceの基礎知識
連携の具体的な方法に入る前に、まずGA4とSalesforceについて基礎から理解しておきましょう。「そんなの知ってるよ」という方も、製造業特有の活用ポイントがありますので、ぜひご一読ください。
GA4(Google Analytics 4)とは
GA4は、Googleが提供する無料のWebサイトアクセス解析ツールです。2023年7月に旧バージョンのUA(ユニバーサルアナリティクス)が終了し、現在はGA4が標準となっています。
GA4の主な機能
- Webサイトの訪問者数、ページビュー数などの基本データ測定
- ユーザーがどのページを見て、どんな行動をしたのかの追跡
- 問い合わせフォームの送信、資料ダウンロードなどの「コンバージョン」測定
- どの流入経路(Google検索、広告、SNSなど)から来たのかの分析
製造業のWebサイトでGA4を活用する際の重要ポイントは、「誰が何に興味を持っているのか」を把握することです。例えば、「精密加工」のページを複数回見ている訪問者は、精密加工の案件を抱えている可能性が高いと推測できます。
Salesforceとは
Salesforceは、世界で最も利用されているCRM(顧客関係管理)・SFA(営業支援システム)です。製造業でも導入が進んでおり、特に中堅企業以上での採用が増えています。
Salesforceの主な機能
- 顧客情報の一元管理(会社名、担当者、連絡先など)
- 営業案件の進捗管理(見込み度、商談ステージ、受注予定日など)
- 営業活動の記録(訪問履歴、提案内容、商談メモなど)
- 売上予測やレポート作成
製造業では、受注までのリードタイムが長く、複数の担当者が関わることが多いため、Salesforceのような統合的な顧客管理システムが特に有効です。
私がITコーディネータとして支援した企業では、Salesforce導入により、営業担当者間での情報共有がスムーズになり、案件の取りこぼしが大幅に減少しました。
以下記事では、中小製造業向けに「SFA導入で本当に売上は上がるのか?」という疑問に答える、SFA活用に特化した営業力強化の具体的な活用法を解説しています。

なぜこの2つを連携させるのか
GA4は「Webサイトでの匿名の行動データ」を収集し、Salesforceは「特定の顧客の営業活動データ」を管理しています。この2つを連携させることで、「匿名の訪問者」が「実名の顧客」になった瞬間から、一貫したデータで追跡できるようになります。
これは、製造業のような「検討期間が長く、高額な取引が多いBtoB商材」において特に重要です。顧客は問い合わせする前に、何度もWebサイトを訪問して情報収集しています。この段階での行動データと、その後の営業活動データを統合することで、より精度の高い営業戦略が立てられるのです。
GA4×Salesforce連携の全体像と仕組み

それでは、GA4とSalesforceをどのように連携させるのか、その全体像を見ていきましょう。初めての方にも分かりやすいよう、段階を追って説明します。
連携の基本的な流れ
GA4とSalesforceの連携は、大きく分けて以下の3つのステップで実現します。
ステップ1: Webサイト訪問者の行動データをGA4で収集
訪問者がどのページを見たか、どんな資料をダウンロードしたか、どの広告から来たかなどのデータをGA4で記録します。
ステップ2: 問い合わせフォームで顧客を特定し、SalesforceにリードとS登録
訪問者が問い合わせフォームを送信した時点で、「匿名の訪問者」が「実名の見込み顧客(リード)」になります。この情報をSalesforceに自動登録します。
ステップ3: GA4のデータとSalesforceのデータを紐付け
問い合わせした顧客のメールアドレスやIPアドレスなどをキーにして、GA4で記録した行動データとSalesforceの顧客データを結びつけます。
この3ステップにより、「どのWebページを見た顧客が、どの営業担当者の対応で、いくらで受注したのか」という一連のストーリーが見えるようになります。
連携方法の選択肢
GA4とSalesforceを連携させる方法は、主に以下の3つがあります。企業の規模や予算、技術力に応じて選択できます。
方法1: Google広告との連携経由(最も簡単)
Google広告を利用している場合、Google広告とSalesforceを連携させることで、間接的にGA4のデータも活用できます。設定が比較的簡単で、初心者向けです。
方法2: 専用の連携ツールを使用(バランス型)
「Salesforce Connector for Google Analytics」などの連携ツールを使う方法です。ある程度の費用はかかりますが、専門的な知識がなくても設定できます。中小企業で最も現実的な選択肢です。
方法3: API連携でカスタマイズ(高度)
GA4のMeasurement Protocol APIとSalesforceのAPIを使って、自社独自の連携システムを構築する方法です。最も柔軟ですが、エンジニアリングの知識が必要です。
まず方法1または方法2から始めることを推奨しています。いきなり高度な連携を目指すと挫折しやすいので、段階的に進めることが大切です。
データ連携で注意すべき個人情報保護
GA4とSalesforceを連携させる際、必ず意識しなければならないのが個人情報保護です。特に製造業のBtoB取引では、顧客企業の担当者情報を扱うため、慎重な対応が求められます。
押さえるべきポイント
- プライバシーポリシーに、Webサイトでのデータ収集とCRMでの管理について明記する
- GA4では個人を特定できる情報(メールアドレス、氏名など)を直接送信しない
- Salesforceでのデータ管理権限を適切に設定し、必要な人だけがアクセスできるようにする
- EUやカリフォルニア州など、厳格な個人情報保護規制がある地域の顧客を扱う場合は、GDPRやCCPA対応を確認する
これらデータガバナンスは企業の信頼性に直結する重要な要素です。技術的な連携だけでなく、法的・倫理的な側面も十分に考慮しましょう。
実践ステップ1: GA4の初期設定と重要イベントの設定
それでは、具体的な実践ステップに入っていきます。まずはGA4の初期設定から始めましょう。
GA4アカウントの作成とWebサイトへの設置
すでにGA4を導入している企業も多いと思いますが、まだの方のために基本的な設定手順を説明します。
手順1: Googleアカウントでアナリティクスにアクセス
Googleアカウントを持っていれば、Google Analytics(https://analytics.google.com/)にアクセスして無料でアカウントを作成できます。
手順2: プロパティの作成
「管理」メニューから新しいプロパティを作成します。この際、「GA4プロパティ」を選択してください(UAは既に終了しています)。
手順3: データストリームの設定
Webサイトのデータを収集するため、「ウェブ」データストリームを追加し、自社サイトのURLを入力します。
手順4: 測定IDの取得とWebサイトへの埋め込み
「G-」から始まる測定IDが発行されるので、これをWebサイトの全ページに埋め込みます。WordPressなどのCMSを使っている場合は、専用プラグインで簡単に設置できます。
最初につまずきやすいのがこの「測定IDの埋め込み」です。技術的な知識がない方は、Web制作会社や社内のIT担当者に依頼することをお勧めします。
製造業で設定すべき重要なイベント
GA4では、「イベント」という単位でユーザーの行動を記録します。製造業のWebサイトで特に重要なイベントは以下の通りです。
必須で設定すべきイベント
- 問い合わせフォーム送信
最も重要なコンバージョンポイントです。必ずイベントとして設定しましょう。 - 資料ダウンロード
カタログ、技術資料、事例集などのダウンロードは、顧客の関心度を測る重要な指標です。 - 製品ページの閲覧
どの製品・サービスに興味を持っているかを把握するため、主要製品ページの閲覧をイベント化します。 - 動画の視聴
製品紹介動画や加工事例動画などを設置している場合、視聴完了をイベントにします。 - 電話番号のクリック
スマートフォンからの電話問い合わせも重要なコンバージョンです。電話番号リンクのクリックを記録します。
イベント設定の実例
私が支援したある精密部品メーカーでは、「技術仕様書のダウンロード」を特に重要なイベントとして設定しました。この資料をダウンロードする顧客は、具体的な案件を抱えている可能性が高いためです。
実際、この仮説は正しく、技術仕様書をダウンロードした顧客の受注率は通常の3倍以上という結果が出ました。
コンバージョンの設定
イベントの中でも特に重要なものは「コンバージョン」として登録します。GA4では、任意のイベントをコンバージョンに指定できます。
製造業で設定すべきコンバージョン
- 問い合わせフォーム送信(最重要)
- 見積依頼フォーム送信
- 技術資料ダウンロード
- 電話番号クリック
コンバージョンを設定することで、「どの流入経路からのコンバージョンが多いか」「どのページを見た人がコンバージョンしやすいか」などの分析が可能になります。
ウェブ解析士マスターとして多くの企業を見てきた経験から言えるのは、コンバージョン設定が曖昧なままGA4を運用している企業が非常に多いということです。まずはここをしっかり固めることが、後の分析の精度を左右します。
実践ステップ2: Salesforceの初期設定とリード管理
次に、Salesforce側の設定を進めていきます。
Salesforceの基本構造を理解する
Salesforceを初めて使う方のために、基本的な用語と構造を説明します。
リード(Lead) まだ商談化していない見込み顧客のことです。Webサイトから問い合わせがあった段階では、通常「リード」として登録します。
取引先(Account) 商談化した顧客企業の情報です。リードが商談化すると、「取引先」に変換されます。
商談(Opportunity) 具体的な案件のことです。「○○社向け精密部品の受注案件」のように、個別の販売機会を管理します。
取引先責任者(Contact) 取引先企業の担当者情報です。一つの取引先に複数の担当者が紐付きます。
製造業では、一つの顧客企業と長期的な取引関係を築くことが多いため、この階層構造をしっかり理解して運用することが重要です。
リード獲得のための設定
Webサイトからの問い合わせをSalesforceにリードとして登録するには、「Web-to-リード」機能を使います。
設定手順
手順1: Web-to-リードの有効化
Salesforceの「設定」メニューから「Web-to-リード」を検索し、機能を有効化します。
手順2: フォームの作成
Salesforceで自動的にHTMLフォームコードが生成されます。このコードを自社Webサイトの問い合わせページに埋め込みます。
手順3: フィールドのマッピング
問い合わせフォームの各項目(会社名、氏名、メールアドレスなど)を、Salesforceのリードフィールドに対応させます。
手順4: 自動応答の設定
問い合わせがあった際の自動返信メールを設定します。
ポイントとしては、問い合わせフォームの項目は必要最小限にすることです。項目が多すぎると入力のハードルが上がり、問い合わせ数が減少します。
実際に支援した企業で、フォーム項目を10個から5個に減らしたところ、問い合わせ数が1.4倍に増加した事例があります。
リードスコアリングの設定
リードスコアリングとは、見込み顧客に点数をつけて優先順位を判断する仕組みです。GA4との連携を見据えて、以下のような基準でスコアを設定します。
スコアリングの例
- Webサイトの訪問回数: 3回以上 +10点
- 製品ページの閲覧: 1ページにつき +5点
- 技術資料のダウンロード: +20点
- 問い合わせフォーム送信: +30点
- 大企業からのアクセス: +15点
このスコアが一定以上になったリードを「ホットリード」として、優先的に営業フォローする仕組みを作ります。
私がBtoB製造業支援で成果を出している企業に共通するのは、このリードスコアリングを営業活動に実際に活用していることです。単に設定するだけでなく、営業会議で「今週のホットリード」を共有し、組織的にフォローする体制が重要です。
実践ステップ3: GA4とSalesforceの連携設定
ここからが本題、GA4とSalesforceを実際に連携させる設定です。
連携ツールの選定と導入
中小製造業で最も現実的なのは、専用の連携ツールを使う方法です。代表的なツールを紹介します。
推奨ツール1: Salesforce Marketing Cloud(旧Pardot)
Salesforce公式のマーケティングオートメーションツールです。GA4との連携機能が標準で備わっています。
メリット: Salesforceとの統合がスムーズ、サポートが充実 デメリット: 月額費用が比較的高い(月額15万円~)
推奨ツール2: HubSpot
マーケティング、営業、カスタマーサービスを統合したプラットフォームです。Salesforceとの連携も可能で、GA4のデータも活用できます。
メリット: 使いやすいインターフェース、段階的な導入が可能 デメリット: Salesforceとの連携には追加設定が必要
推奨ツール3: Zapier / Make(旧Integromat)
様々なアプリケーション同士を連携させるツールです。GA4とSalesforceをノーコードで接続できます。
メリット: 低コスト(月額2,000円~)、柔軟なカスタマイズ デメリット: 大量データの処理には向かない
まずは小規模から始めて効果を確認し、徐々に拡大していくことをお勧めします。いきなり高額な投資をして失敗するより、段階的に進める方が確実です。
具体的な連携設定手順(Zapierを使った例)
ここでは、比較的導入しやすいZapierを使った連携方法を説明します。
手順1: Zapierアカウントの作成
Zapier(https://zapier.com/)にアクセスし、アカウントを作成します。
手順2: 新しいZapの作成
「Create Zap」ボタンから新しい連携フロー(Zap)を作成します。
手順3: トリガーの設定(GA4側)
トリガーとなるアクションを設定します。例:「GA4で特定のイベント(問い合わせフォーム送信)が発生したら」
手順4: アクションの設定(Salesforce側)
トリガーに応じて実行するアクションを設定します。例:「Salesforceに新しいリードを作成する」
手順5: フィールドマッピング
GA4から取得したデータ(メールアドレス、会社名など)を、Salesforceのどのフィールドに入力するかを設定します。
手順6: テストと有効化
実際に問い合わせをテスト送信して、Salesforceに正しくリードが作成されるか確認します。問題なければ、Zapを有効化します。
この設定により、Webサイトで問い合わせがあると、自動的にSalesforceにリードが作成され、営業担当者に通知が届くようになります。
UTMパラメータの活用
GA4とSalesforceを連携させる上で欠かせないのが、UTMパラメータです。これは、URLに付加する追加情報で、どの広告やメール、SNS投稿から流入したのかを識別するものです。
UTMパラメータの構成
- utm_source: 流入元(例: google, facebook, email)
- utm_medium: メディア種別(例: cpc, organic, social)
- utm_campaign: キャンペーン名(例: summer_campaign_2025)
- utm_content: 広告の内容(例: banner_a, text_link)
- utm_term: 検索キーワード(例: precision_machining)
製造業での活用例 展示会で配布するチラシにQRコードを印刷する際、以下のようなUTMパラメータ付きURLを使います。
https://www.example.com/?utm_source=exhibition&utm_medium=offline&utm_campaign=tech_expo_2025&utm_content=qr_code
このURLを使うことで、「2025年の技術展示会のQRコードから何人が訪問し、そのうち何人が問い合わせして、最終的に何件受注したか」が追跡できます。
重要ポイントは、UTMパラメータは組織全体で統一したルールを作ることです。担当者によってバラバラな命名規則を使うと、後で分析できなくなります。
実践ステップ4: データの可視化とダッシュボード作成
連携ができたら、次はデータを見やすく可視化する段階です。
Salesforceでのレポート作成
Salesforceには強力なレポート機能があります。GA4との連携データを活用した、製造業向けレポートの例を紹介します。
レポート1: 流入経路別の受注率 どの流入経路(Google検索、広告、展示会など)からの問い合わせが最も受注率が高いかを分析します。
表示項目
- リードソース(GA4から取得)
- リード数
- 商談化数
- 受注数
- 受注率
- 受注金額
このレポートにより、「Google広告からの問い合わせは受注率が高いが、単価は低い」「展示会からの問い合わせは数は少ないが、高額案件が多い」といった傾向が見えてきます。
レポート2: コンテンツ別の貢献度 どのWebページや資料が受注に貢献しているかを分析します。
表示項目
- 閲覧ページ / ダウンロード資料
- 閲覧/ダウンロード数
- その後の問い合わせ数
- 受注数
- 貢献度スコア
私が実際に支援した金型メーカーでは、このレポートにより「加工事例ページを見た顧客の受注率が特に高い」ことが判明し、事例コンテンツの拡充に注力した結果、Web経由の受注が前年比40%増加しました。
GA4でのカスタムレポート作成
GA4側でも、Salesforceのデータを反映させたカスタムレポートを作成できます。
レポート3: ユーザー行動と受注の相関分析 受注に至った顧客と至らなかった顧客で、Webサイト上の行動にどんな違いがあるかを分析します。
分析項目
- ページビュー数
- サイト滞在時間
- 訪問回数
- 閲覧ページの種類
このデータから、「受注した顧客は平均4回サイトを訪問している」「技術ページを3ページ以上見た顧客の受注率は2倍」といった傾向が見えます。
Looker Studioでの統合ダッシュボード
GA4とSalesforceのデータを一つの画面で確認するには、Looker Studio(旧Google Data Studio)が便利です。無料で使える強力なダッシュボードツールです。
統合ダッシュボードに含めるべき指標
上段: Webサイトパフォーマンス(GA4データ)
- セッション数、ユーザー数
- コンバージョン数、コンバージョン率
- 流入経路別の訪問数
中段: リード・商談状況(Salesforceデータ)
- 新規リード数
- 商談化数、商談化率
- 受注数、受注率
下段: ROI分析(統合データ)
- 流入経路別の受注金額
- マーケティング投資対効果(ROAS)
- 顧客獲得コスト(CAC)
このダッシュボードを営業会議で毎週確認することで、マーケティング施策と営業成果の関連性が組織全体で共有され、データドリブンな意思決定ができるようになります。
経営層が一目で状況を把握できるダッシュボードの存在は、迅速な意思決定に不可欠です。
実際の活用事例: 製造業3社の成功ストーリー

ここで、私が実際に支援した製造業3社の具体的な成功事例を紹介します。
事例1: 精密部品加工メーカーA社(従業員50名)
課題
Web広告に月20万円投資していたが、実際にどれだけの受注につながっているのか不明。広告費の妥当性を判断できない状況でした。
実施した施策
- GA4とSalesforceを連携し、広告経由の顧客を完全追跡
- UTMパラメータを用いて広告キャンペーン別に効果測定
- 週次で「広告経由のリード・受注状況」レポートを作成
成果
- Google広告の特定キーワード群の受注率が25%と高いことが判明
- 効果の低い広告を停止し、効果の高い広告に予算を集中
- 広告費は変えずに、Web広告経由の受注金額が3ヶ月で2.1倍に増加
- 経営層が広告投資の効果を数字で確認でき、さらなる予算増額を決定
A社社長のコメント:「これまで広告代理店の言いなりで広告費を払っていましたが、どの広告が本当に効果があるのか自社で判断できるようになりました。データに基づいて投資判断ができるのは大きな安心材料です」
事例2: 産業機械メーカーB社(従業員120名)
課題
営業担当者10名が個別に顧客管理しており、情報共有が不十分。顧客がWebサイトで何を見ているのか営業が把握できていませんでした。
実施した施策
- Salesforceで顧客情報を一元管理
- GA4との連携により、顧客のWebサイト閲覧履歴をSalesforceで確認可能に
- 営業担当者向けに「顧客の関心事の見方」研修を実施
成果
- 営業担当者が商談前に顧客の関心製品を把握できるようになった
- 「○○のページを見ていましたが、ご興味ありますか?」という切り口で提案できるようになり、商談の質が向上
- Web経由問い合わせの受注率が18%から27%に向上
- 営業担当者間で「あの顧客が当社のWebサイトを見始めた」という情報共有が活発化
B社営業部長のコメント:「以前は『とりあえず訪問する』という営業スタイルでしたが、今は顧客の関心事を把握してから訪問するので、提案の精度が格段に上がりました。若手営業でもベテランと同じような提案ができるようになったのが大きいです」
事例3: 金属加工メーカーC社(従業員30名)
課題
展示会に年間200万円投資していたが、展示会経由の顧客がどれだけ売上に貢献しているか測定できていませんでした。
実施した施策
- 展示会で配布する資料にQRコード(UTMパラメータ付き)を印刷
- QRコードからのアクセスをGA4で追跡
- 展示会で名刺交換した企業をSalesforceにリード登録し、その後の行動を追跡
成果
- 展示会A: 200名来訪、40名QRコード利用、5件問い合わせ、2件受注(金額計800万円)
- 展示会B: 150名来訪、20名QRコード利用、2件問い合わせ、0件受注
- 費用対効果の高い展示会を特定し、出展する展示会を選別
- 限られた予算をより効果的に配分できるようになり、展示会経由の受注が前年比1.7倍
C社社長のコメント:「『展示会は出ないと不安』という理由で慣例的に出展していましたが、データを見ると明確に効果のある展示会とそうでない展示会があることが分かりました。今は戦略的に展示会を選んでいます」
これらの事例に共通するのは、「なんとなく」ではなく「データに基づいて」マーケティング・営業活動を行うようになったことです。これがまさに営業DXの本質です。
運用のポイントと成功の秘訣
GA4とSalesforceの連携は、導入して終わりではありません。継続的に運用し、改善していくことが重要です。
データを見る習慣を組織に根付かせる
多くの企業で連携ツールは導入したものの、「誰も見ていない」という状況に陥ります。これを防ぐための工夫を紹介します。
週次営業会議での定例報告 毎週の営業会議の最初の10分で、以下のデータを必ず確認します。
- 先週のWebサイト流入数とコンバージョン数
- 新規リード数と商談化状況
- 注目すべき高スコアリード
月次でのROI分析 月に一度、マーケティング投資の費用対効果を経営層に報告します。
- 各施策別の投資額と受注金額
- ROIの高い施策、低い施策
- 次月の予算配分案
四半期ごとの戦略見直し 3ヶ月に一度、蓄積したデータをもとに、マーケティング・営業戦略を見直します。
私がBtoB製造業支援で最も重視しているのは、この**「データを見る習慣」の定着**です。ツールをいくら導入しても、見なければ意味がありません。
営業担当者を巻き込む
GA4とSalesforceの連携を成功させるには、営業担当者の協力が不可欠です。しかし、「また新しいシステムか」と抵抗感を持たれることも少なくありません。
営業担当者を巻き込むコツ
1. メリットを明確に伝える 「入力作業が増える」ではなく「顧客の関心事が事前に分かって商談しやすくなる」というメリットを強調します。
2. 入力負担を最小化する 自動連携できる項目は最大限自動化し、手入力は最小限にします。
3. 成功事例を共有する 特定の営業担当者が連携データを活用して大型受注した事例を、全体会議で共有します。「自分もやってみよう」という雰囲気を作ります。
4. トップが率先する 経営層や営業部長が率先してデータを見て意思決定する姿勢を示すことで、組織文化が変わります。
重要なポイントは、現場の営業担当者の理解と協力なしにDXは成功しないということです。必ず営業現場の声を聞くことから始めましょう。
PDCAサイクルの回し方
GA4×Salesforce連携の真の価値は、データをもとにPDCAサイクルを回し、継続的に改善していくことにあります。
製造業向けPDCAサイクルの例
Plan(計画)
- データ分析から「技術ページの閲覧者は受注率が高い」という仮説を立てる
- 「技術ページへの流入を増やすSEO施策を実施する」という計画を立てる
Do(実行)
- 技術ページのコンテンツを拡充
- 技術キーワードでのSEO対策を強化
- 技術記事をメールマガジンで配信
Check(評価)
- 1ヶ月後、GA4で技術ページの流入数の変化を確認
- Salesforceで技術ページ経由の問い合わせ数と受注率を測定
Action(改善)
- 効果が高かったコンテンツのテーマを特定
- 同様のテーマで新しいコンテンツを追加作成
- 効果が低かった施策は中止または改善
このサイクルを3ヶ月単位で回していくことで、データに基づいた継続的な成長が実現します。
最初は月次、慣れてきたら週次でこのPDCAを回せるようサポートしていきます。
よくある課題と解決策
GA4×Salesforce連携を進める中で、多くの企業が直面する課題とその解決策を紹介します。
課題1: データの精度が低い
症状
- Salesforceに登録されている顧客のメールアドレスと、GA4で追跡しているユーザーが紐付かない
- 同一顧客が複数のデバイスでアクセスしており、別人として記録されてしまう
解決策
- 問い合わせフォームに必ずメールアドレスを必須項目として設定
- Salesforceの「Email to Salesforce」機能を活用し、メールのやり取りも記録
- GA4の「User-ID機能」を使って、ログインユーザーを統合追跡
課題2: 営業担当者がSalesforceに情報を入力しない
症状
- 営業活動の結果がSalesforceに記録されず、分析データが不完全
- 「忙しくて入力する時間がない」という声
解決策
- 入力項目を必要最小限に絞る(最初は5項目程度から)
- スマートフォンアプリで外出先でも簡単に入力できる環境を整備
- 入力状況を可視化し、適切に入力している担当者を評価する仕組みを作る
- 「入力しないと自分が損をする」と実感できる仕組み(例: 自分の担当顧客の関心事が見られる)
課題3: データが多すぎて何を見ればいいか分からない
症状
- GA4とSalesforceの両方で膨大なデータが蓄積されているが、活用できていない
- ダッシュボードに数十の指標が並んでいるが、結局何が重要なのか分からない
解決策
- 最初は3つの指標だけに集中する
- Web問い合わせ数(GA4)
- 商談化率(Salesforce)
- 受注率と受注金額(Salesforce)
- 慣れてきたら徐々に見る指標を増やす
- 「この数字が悪化したら要注意」という基準値を設定
ポイントとしては、**「最初から完璧を目指さない」**ということです。まずは基本的な指標から始めて、徐々にレベルアップしていく方が確実に成果につながります。
課題4: 投資対効果が見えにくい
症状
- 連携ツールの月額費用を払っているが、本当に元が取れているのか経営層から疑問の声
- 「導入前と比べてどれだけ改善したのか」が数字で示せない
解決策
- 導入前の3ヶ月のデータを記録しておき、導入後と比較
- 「Web経由の受注率」「営業担当者1人あたりの受注金額」などの指標で改善度を測定
- ツール費用と、それによって増加した受注金額を比較してROIを算出
例: ツール費用月5万円、Web経由受注が月2件増加、平均受注単価300万円の場合 → 月600万円の売上増加に対してコスト5万円 = ROI 120倍
このように明確に数字で示すことで、経営層の理解と継続的な投資が得られます。
今日から始める3つのステップ

ここまで読んでいただき、「やってみたい」と思われた方も、「うちの会社でできるだろうか」と不安に感じている方もいるでしょう。最後に、今日から始められる具体的なステップをお伝えします。
ステップ1: 現状を把握する(今日~1週間)
まずは自社の現状を確認しましょう。以下のチェックリストを使って、どこから始めるべきか明確にします。
現状確認チェックリスト
- GA4は導入済みか?(未導入の場合は最優先で導入)
- 問い合わせフォーム送信をGA4でコンバージョンとして記録しているか?
- Salesforceまたは何らかのCRM/SFAを使っているか?
- Web問い合わせをCRMに記録しているか?
- 営業担当者は顧客情報をCRMに入力しているか?
- Webマーケティング担当者と営業部門で定期的な情報共有があるか?
このチェックリストで「No」が多い項目があれば、そこから改善を始めます。
ステップ2: 小さく始めて成功体験を作る(1週間~1ヶ月)
いきなり完璧なシステムを目指すのではなく、小さな成功体験を積み重ねることが重要です。
最初の1ヶ月でやるべきこと
- GA4で問い合わせ数を毎週確認する習慣をつける
- 問い合わせがあったら、必ずSalesforceにリード登録する
- 1件でいいので、「このリードはWebサイトでどんなページを見ていたか」を確認してみる
- その情報をもとに営業担当者が商談し、結果を記録する
この小さなサイクルを1ヶ月回すだけでも、「Web行動データが営業に役立つ」という実感が得られます。
ステップ3: 段階的に機能を拡張する(1ヶ月~3ヶ月)
小さな成功体験ができたら、徐々に機能を拡張していきます。
第1段階(1ヶ月目)
- GA4とSalesforceの基本的な連携(問い合わせフォームのみ)
- 週次での簡易レポート確認
第2段階(2ヶ月目)
- 資料ダウンロードなど、他のコンバージョンも追跡
- UTMパラメータを使った流入元の詳細分析
- 月次での詳細レポート作成
第3段階(3ヶ月目)
- リードスコアリングの導入
- Looker Studioでのダッシュボード作成
- 営業会議での定例報告化
このように段階を踏んで進めることで、組織全体が徐々に慣れていき、定着率が高まります。
「完璧を目指して動けなくなるより、不完全でも動き始める方が100倍良い」ということです。
まとめ: データドリブンな営業組織への第一歩
本記事では、GA4とSalesforceを連携させて製造業の営業成果を可視化する方法を、初心者の方にも分かりやすく解説してきました。
重要ポイントのおさらい
- 製造業こそGA4×Salesforce連携が必要 Web経由の問い合わせが増えている今、Webマーケティングと営業活動を統合して管理することが競争力の源泉になります。
- 連携により「見える化」が実現 どのWebページを見た顧客が、どれだけ受注につながったのかが明確になり、効果的な施策に投資を集中できます。
- 小さく始めて段階的に拡大 いきなり完璧なシステムを目指すのではなく、基本的な連携から始めて徐々に機能を拡張する方が成功率が高いです。
- 組織文化の変革が鍵 ツールの導入だけでなく、データを見て意思決定する組織文化を作ることが最も重要です。
これまで20社以上の製造業企業を支援してきた実績の中で、確信を持って言えることがあります。それは、**「データに基づいた営業活動は、必ず成果につながる」**ということです。
「うちの会社には難しいのではないか」 「専門知識がないから無理なのでは」 「忙しくて新しいことに取り組む余裕がない」
こうした不安を感じるのは当然です。しかし、一歩を踏み出さなければ、何も変わりません。
本記事で紹介した方法は、実際に私が支援企業で実践し、成果を出してきた方法です。特別な知識やスキルがなくても、段階を踏んで進めれば必ず実現できます。
GA4とSalesforceの連携は、製造業の営業DXを加速させる強力な武器です。ぜひ今日から、できることから始めてみてください。
Webマーケティングの知識をより深く学びたい方へ
Good Rhythm Consultingでは、Webマーケティングの知識をより深く学びたい方向けに、「ウェブ解析士認定講座」を随時開講しています。製造業のWebマーケティング実務に特化したカリキュラムで、中小企業診断士による実践的な指導を行っています。
本記事で解説したGA4の活用方法や、データ分析の基礎から応用まで、体系的に学べる内容になっています。「独学では不安」「専門家から直接学びたい」という方は、ぜひご検討ください。
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